昨年の春闘交渉ふりかえりのコーナー

昨年~2022春闘~のたたかいを振り返ってみよう

最終更新日 2023年 2月 3日


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  ■ 中央執行委員会見解を発出  (2022年 3月18日)

 中央本部は2022年度賃金改定妥結に当たり、3月18日付で中央執行委員会見解を発出しました。


2022春闘妥結に関する中央執行委員会見解

 

 私たち東日本ユニオンは2月17日に「定期昇給・昇給係数4の実施」「第二基本給の廃止」「特別加給の運用停止」の要求を掲げ、申第22号「2022年度賃金改善等に関する申し入れ」を提出し、3月2日に団体交渉をスタートしました。

 交渉議論では、今期の厳しい経営状況下であっても、2022春闘においては「定昇については昇給係数4の実施以外は断固として認めない!」とする決意を明確にした要求に対して、経営側は「今般の経営状況を踏まえた要求であることは認識している」と認識の一致を図る交渉を積み重ねてきました。

 3月17日、3回目となる団体交渉の席上において、経営側は「定期昇給を実施する。昇給係数は4とする」「第二基本給は廃止しない」「特別加給は実施する」とした回答を示しました。組合側は「昇給係数4」の確保を確認し、さらに経営側より「定年制のもと様々な業務に従事し、勤続年数が増えるごとに能力が向上する考え方で、1年に1度昇給をしていく制度に変わりはない」とした年功制と定年雇用制を確認しつつ「春闘交渉では持続的成長とベースアップ議論をすることが望ましい」と認識一致を図りました。

 しかし、昨年の昇給係数2によって生じた格差について、経営側は「4に戻す考えはない」と明言しています。また、第二基本給の廃止について「総額人件費に与える影響を考えなければならない。現行で妥当である」とし、特別加給の運用停止については「制度の趣旨として社員に優劣をつけるものではない。経営状況に関わらず実施する」と最後まで認識は一致しませんでした。組合側は、会社回答を持ち帰り検討することを通告しました。

 直ちに開催した中央執行委員会では「昇給係数4」の確保、年功制賃金体系と終身雇用制度を堅持した成果を確認し「妥結」の判断をしました。

 昨年、経営側が実施した「昇給係数2」においては、経営状況だけがクローズアップされ、社員の生活実態は置き去りにされていました。東日本ユニオンは、この現実から出発し、要求のあり方から組織の強化・拡大 など組合員間でこれまで議論を交わし取り組みを進めてきました。今日に至る成果と課題を共有し、そして「昇給係数4」を確保した上に立って、さらに議論と運動を未来に向かって積み重ねていくこととします。

 2012年に実施をされた新たな人事・賃金制度下で初めて、昨年に実施された「昇給係数2」は、社員間において月例賃金、退職金などに影響を及ぼし生涯賃金を低下させました。それは年齢による賃金カーブの格差を生み出しており、今なお課題として残されています。このままの状態では賃金カーブが55歳の到達時点まで昇給係数の「2係数」が不足している社員が存在したままの現状にあります。 東日本ユニオンは、この現状がJR労働者にとって大きな課題であることを明確にして、さらなる組織の強化と拡大を通じ、克服に向けて取り組みます。

 3月16日に発生した福島県沖を震源とする地震の対応と復旧作業、コロナ禍でのエッセンシャルワーカーとしての使命を果たしつつ、日々の安全とサービスをお客さまに提供し、会社発展のために奮闘している社員に対する正当な賃金、労働条件を勝ち取るために、東日本ユニオンの運動をさらに前進させましょう!

 昨年の春闘そして厳しい経営環境の中で、前例や慣例だけにとらわれることなく、今までにない2022春闘を各地方、各職場からつくりあげていただいた全ての組合員に感謝を申し上げます。

 東日本ユニオンは、雇用を守ることを前提に、JR労働者と家族の生活向上を実現するために、全ての組合員と共に闘う決意を申し上げ、2022春闘妥結に関する中央執行委員会見解とします。

 2022年3月18日

 JR東日本労働組合

 中央執行委員会

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  ■ 第3回団体交渉 (2022年 3月17日)

 第3回団体交渉は2022年3月17日。経営側より回答を受けました。



1.令和4年4月1日現在、満55歳未満の社員

  定期昇給を実施し、その際の昇給係数は4とする。

2.前項の精算については、令和4年6月24日(金)以降、準備でき次第とする。


★口頭回答

 ・第二基本給を廃止する考えはない

 ・特別加給を実施しないとの考えはない


◆ 定期昇給4係数の実施について

<組合側>

  •  第2回目の交渉で経営側は「通期において2期連続の赤字予想となっており、慎重に判断しなければならない」としつつも「現行の賃金制度以上にベースを上げていくことは難しい」という認識を示したことから、昇給係数4の実施については可能であると受け止めた
  •  新型コロナウイルス感染症は、経営側にとっても「想定外のリスク」であったと思う。しかし「変革2027」では人口減少によるお客さまのご利用減も予測している。中長期の将来を見据え、持続的成長が達成できる経営戦略を担うのは私たちだ。現在の賃金制度では昇給係数4が当然である。
  •  労使にとって賃金交渉のは場は、会社の成長がありベースアップ議論ができることが労使にとって望ましいと思っている

<経営側>

  •  労働組合側の趣旨として「ベースアップは必要であるが、今般の経営状況を踏まえた要求である」ことは認識している
  •  昇給係数4が制度上「当たり前」とは言えないが、昇給係数4を行えるよう持続的成長と生産性向上の経営戦略は打ち出している。その先のベースアップ議論についても労働条件の向上につながると考えている
  •  持続的成長なくして社員還元は図れないが、いたずらに賃金を抑制する考えはない。「変革2027」に基づいた取り組みが労働条件の向上につながる。社員と家族の幸福を実現していく考えに変わりはない。
  •  定年制と長期雇用のもと、様々な業務に従事し、勤続年数が増えるごとに能力が向上する考え方で、一年に1度昇給をしていく制度に変わりはない。
組合
回答書にある「消費者物価など生活に関わる指標の動向にも配慮」とは、定期昇給の要素ではない。我々の認識ではベースアップの要素だ
会社
物価水準の上昇と国際情勢も不安要素の考慮に入れて昨年よりも多く昇給するという判断だ。昇給係数4による昇給も必要な要素だと認識して実施した
組合
昨年度が2係数だったことにより、今後も埋まることのない「格差」をどう理解すれば良いのか。
会社
現段階において4に戻す考えはない。差異は認識している。今後、検討するべきか否かも含めて考えていく。「対処するのか」「対処しないのか」も含めての議論となる。

◆ 第二基本給の廃止について

<組合側>

  •  組合側からすれば、毎年第二基本給の制度下において減らされているという認識。いつ制度の見直しに具体的に着手するのか、見通しも含めて示せるものはないか

<経営側>

  •  会社としては現時点、現行制度で妥当なものであると判断して第二基本給廃止という判断には至っていない
  •  仮に定年延長があれば賃金カーブ全体も含めて議論も必要で、賃金制度全体を見直せば退職手当もそこに含まれると思うが、実際にその検討課程に入らないと約束は難しい

◆ 特別加給の停止について

<組合側>

  •  一丸になって向かうという今の状況下において、一部の人だけが「優」の評価を受ける状況は好ましくない。だから今の状況下においては運用するべきではないということを主張している

<経営側>

  •  特別加給の制度そのものの廃止ではなく、コロナ禍赤字からの脱却ということの中でなぜ今の時期にというという組合側の主張だと理解している
  •  社員一人ひとりから尽力いただいているというのは事実だが、勤務成績が優秀な社員に報いていくということが会社として大切であり、しっかり評価していくということも必要なことであるとの認識

 中央本部は経営側からの回答に対して席上妥結はせず、持ち帰り議論としました。

 中央執行部による持ち回り稟議を行い、妥結を行う判断をしました。

 中央本部は3月18日、経営側に対して妥結する旨を回答しました。

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  ■ 第2回団体交渉 (2022年3月10日)

 第2回団体交渉は2022年3月10日。「昇給について慎重な判断が必要」という経営側に対し本部交渉団は、「昇給係数は4が当たり前であり、このような議論は今年限りとしたい」と強く訴えました。


◆ 組合側の主張

●4係数での定期昇給実施について

  • すでに実施している会社諸施策など多様な働き方により生産性は十分に向上している。原油価格高騰の影響により光熱費、食料品、生活必需品などの物価も上昇している。昨春の「昇給係数2」や期末手当に対する回答に納得していない。このような現状を見ればベースアップが必要であるが、定期昇給の実施「昇給係数4」の要求に留めた苦渋の決断を経営側は受け止めるべきだ
  • 定期昇給がない55歳以上の組合員、エルダー組合員も生産性を向上させているが、自らの賃金引き上げを差し置いてでも将来にわたり発展し続けるJR東日本と社員・家族のために「昇給係数4」が絶対であるとした想いを経営側は受け止めるべきだ
  • 定期昇給は「昇給係数4」が当たり前との認識だ。昇給係数についての議論は、今年の賃金改訂交渉で最後にしたい
  • いかなるビジネスモデルや経営ビジョンも、それを支え実現するには人材が必要。社員が辞めてしまいたくなるような会社であってはならない
  • 業績回復後には昨年の「昇給係数2」相当分もあわせて求める

●第二基本給廃止について

  • 経営体力などJR発足当時と今では大きく変わっており、第二基本給は生い立ちを踏まえれば、すでにその使命は終えている

●特別加給の運用停止について

  • 様々な施策や職場における取り組みに全社員が向かっている。一部の人を「特に優秀」として加給する必要があるのか。厳しい収益の中でも増収を生み出したすべての社員が優秀であり、その努力に優劣はない
  • 鉄道事業では、社員個人だけで収益を生み出すことはない。社員のチームワークや会社全体で生み出している。汗をかき、頑張っているのはすべての社員だ

◆ 経営側の主張

  • 3月2日の第1回交渉での議論も含めて、組合側の主張は会社としても理解しているし、受け止めている
  • 定期昇給の実施にあたっては、一年間の社員の取り組みを会社として理解している。一方で目下、厳しい2年連続の赤字である経営状況の中、昇給については慎重な判断が求められている
  • 昨年の昇給は会社発足以来はじめて昇給係数2となったが、いたずらに社員の賃金を抑制することを念頭に置いたわけではない。生産性向上と収益を上げ、会社の持続的成長を実現して「社員・家族の幸福の実現」の好循環をつくりだしていく
  • 生活に充てるために賃金を支払っているわけではない。雇用契約であるから、社員が労務を提供して会社は賃金を支払う。あくまで労働の対価として会社は賃金を支払う

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  ■ 第1回団体交渉 (2022年3月2日)

 第1回団体交渉は2022年3月2日。組合側から要求の趣旨説明を行うとともに、経営側から現状認識の説明を受けました。


◆ 組合側の要求趣旨説明(要旨)

  • 昨春の「昇給係数2」は月々の賃金をはじめ、退職に至るまでの生涯賃金に多大な影響を及ぼしていることを労使で認識一致をはかり、経営側が賃上げをもってJR労働者に誠意を示すべき
  • 経営側はこの1年、明らかに人件費の削減にかたよった営業費用の見直しを行ってきた。「人事・賃金制度」の根幹をなす賃金カーブを破壊することにつながる定期昇給に手を付けることは絶対に認められない
  • 20代で国鉄からJR東日本の発足という雇用不安を含めた激動期に直面し、今のJR東日本の成長と発展を中心的につくりだしてきた55歳以上の組合員の想い。自らの経験と技術、技能をいかんなく発揮するとともに、低賃金のもとで今なお現場第一線で働くエルダー組合員の想い。すべての組合員の想いを受け止めた上で、今2022年度賃金改善交渉に臨んでいる
  • 賃金は労働条件の最たるものであり、私たちJR労働者が生きていくために必要な土台である。黒字化の実現後には「昇給係数2」に相当する賃金と、これまでの物価上昇分及び生産性向上を行ってきた労働力の対価に相応しい賃金の引き上げを行うことの認識一致を求めていく
  • 「第二基本給」は使命を終えている。直ちに廃止することを求める
  • 黒字化の実現に向けたJR労働者の奮闘に優劣はない。すべてのJR労働者が「成績が特に優秀な社員」である!今賃金改訂においては特別加給の運用停止を求める

◆ 経営側の現状認識(要旨)

<基本的な認識>

  • 基準内賃金の引き上げについては、長期にわたり総額人件費に多大な影響を及ぼすことから足元の状況を踏まえつつ中長期的な動向等を踏まえ、慎重な判断が必要
  • 基本給は中長期的な経営見通しを踏まえて環境の変化に対応するための生産性向上に対する社員の貢献への成果配分という観点を基本として、様々な要素を踏まえながら毎年度の経営状況を勘案しながら、議論を経て決定するもの
  • 第3四半期決算については前年度の新型コロナウイルス感染症の反動があったものの、コロナ前の水準には回復していない。本業の力を示す営業利益は引き続き赤字決算
  • 会社発足から30年以上かけて約3兆円返してきた有利子負債がコロナ後の1年間で約1兆円増えた。昨年度末からさらに3,000億円増加している
  • 中長期的に見て、ライフスタイルや価値観が大きく変化した。世の中の変化がさらに加速している。鉄道をご利用になるお客さまはコロナ以前の水準には戻らないと考えている
  • 仕事と組織を抜本的に改革して、新たな価値創造を加速するとともに、変化にスピーディーに対応できる新しい会社をつくりあげることで、サスティナブルな成長を果たしていかなければならない。職場や系統といった垣根を越えたスピーディーな課題解決に取り組み、成功に向けて努力するサイクルを回していくことが求められている
  • 引き続き諸施策については時間軸をしっかりと意識してスピード感を持って積極的かつ建設的に進めていきたい

<基本的なスタンス>

  • 基準内賃金の引き上げについては足元の状況を踏まえつつ、中長期的な動向等を慎重に勘案しながら議論する必要がある
  • 新型コロナウイルス再拡大の影響で先行きは不透明。世の中の変化のスピードが加速する中、サスティナブルな成長を実現するためには、仕事と組織を抜本的に改革して新たな価値・サービスを創造する、変化にスピーディーに対応できる新しい会社をつくりあげていくことが必要
  • 新賃金については極めて慎重に判断しなければならない状況に変わりない。それ以外の要求についても人件費に与える影響を総合的に勘案して判断していく必要がある

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  ■ 申22号として賃金改善の要求を提出 (2022年 2月17日)

 2022年賃金引き上げ要求の提出は、2022年2月17日。申22号・2022年度賃金改善等に関する申し入れとして経営側に提出しました。

 赤字経営下での賃金交渉であることに加え、前年・2021年度の賃金改定で定期昇給が所定昇給係数の4ではなく2で実施されたことを踏まえ、あえてベースアップ要求を行わず4係数での定期昇給の完全実施を求めました。


 2022年度賃金改善等に関する申し入れ  (2022年2月17日申し入れ)

 当社の「2021年度第3四半期決算」が1月31日に発表されました。単体においては営業収益が1兆797億円、対前年121.8%となりました。本業の儲けを示す営業利益はマイナス372億円となったものの、2,506億円の増益となっています。

 東日本ユニオンはこの1年間、社員とその家族の幸福の実現に向けて、JR東日本グループの黒字化を運動方針に掲げ、職場から「安全・安定輸送の確保」と「サービス向上」に寄与してきました。また、赤字下における企業活動の点検行動を展開してきました。

 決算にもあらわれているように、新型コロナウイルス感染症の影響が長引くなか、増収・増益を実現してきた背景には、全社員が経営状況を認識し、新たな事業分野への挑戦と価値の創造を通じて業績の回復をめざし、自らも成長を遂げてきたからであるといえます。

 会社発足から経験したことのない状況下で、苦しみながら奮闘している社員の生活と労働条件の維持・向上を図る責務が経営側にはあります。

 2021年度賃金改訂において定期昇給は実施されたものの、昇給係数は「2」であり、社員の生涯賃金に大きく影響を与えたほか、期末手当においても年間4.0ヶ月分と年収が大幅に下がり、将来設計と生計費のあり方は一変しました。

 2022年度賃金改訂については、コロナ禍でも「自らの生活基盤の確立と会社の発展のために奮闘したい」というJR労働者の想いの詰まった要求です。日々高まる労働力の価値に見合った賃金と定年まで安心して働くことができる賃金改善等を求めます。

 したがいまして、下記の通り申し入れますので経営側の真摯な回答を要請します。

  1. 定期昇給を実施すること。昇給係数は4係数とすること。
  2. 第二基本給を廃止すること。
  3. 2022年度の賃金改訂においては賃金規程第23条の特別加給を行わないこと。

 

以 上

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